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The scene

パクセー便り#11
「ラオス国母子保健統合サービス強化プロジェクト」
へ派遣中の建野技術顧問からのお便り

 

パクセーはラオスで2番目に大きな街で、チャンパサック県の県庁所在地。
プロジェクトの事務所は同県保健局・母子保健課内に置かれています。

費用共同負担

『ビエンチャンタイムス』(Vientiane Times)は、ビエンチャンで発行されている英文の日刊紙で、プロジェクトには2、3日遅れで配達されます。1、2面には、毎日といってよいほど、国連機関やODAによる援助に関する記事が載っており、JICAの事務所所長は、このような記事の常連の一人となっています。総紙面における、このような記事の「占有率」を確かめたことはありませんが、結構な割合であることは間違いないようです。このように、ラオス国は、援助なしでは成り立たない国の一つになっており、ラオス政府並びにラオス国民もこのことを当然のこととして受け止めている感じがしてなりません。ドナー(当地では”Development Partner: DP”と呼ばれ、大きな位置を占めています)の間でも、このような認識が広まっているような気がしており、何かしら割り切れない気持ちで、『ビエンチャンタイムス』を見ている次第です。

プロジェクト活動を実施していて、いつも不安になるのは、プロジェクト成果をどのように継続していくのかということです。プロジェクト活動の経費は、プロジェクト側で負担しているものが多く、特にラオスでは、本来は、カウンターパート側が負担しなければならない経費もプロジェクトで負担せざるをえないケースが見られます。つまり、プロジェクト終了と共に活動経費はゼロになり、当然それまでの活動はストップの憂き目をみることになります。このような体験をした専門家は、ラオスに限らず多いのではないかと思います。いかに立派な成果をあげているプロジェクトでも、その成果に持続性がなく、次につながるものでなければ、私には失敗プロジェクトと思われるのですが、多くのプロジェクト評価はプロジェクト期間中の成果に重点を置いており、成果の持続性や継続性に重点を置いた評価は少ない印象を持っています。特に、「財政措置(ファイナンス)」面に焦点をあてた評価はあまりありません。そもそも、保健プロジェクトで、その成果並びに目的に「財政措置」の創出を掲げているものは、非常に少なくなっています。

以前、国立国際医療センター(International Medical Center of Japan: IMCJ) (i) の派遣協力課で、保健システム強化のタスクフォースを立ちあげ、保健システムのフレームワークの提案を行いました(図1「保健システム強化のためのフレームワーク」参照)。このフレームワークは、WHOが提案した保健システムを原案とし、修正を加えたものですが、保健システムの機能として、「(責任ある)マネジメント」、「財政措置」、「資源創出」、「サービス提供」、「サービス利用」(WHO案では、後者の二つはサービス提供として一つになっている)の5つの機能を挙げています (ii) 。2007年当時に実施されていたJICA技術協力24事例をそのPDMをもとにその活動並びに成果をフレームワーク(ログフレーム形)に落として類型化を試みました。その結果は、母子保健や感染症対策プロジェクトでは、「マネジメント」、「サービス提供」型が多く、システム強化型プロジェクトの大半は、「マネジメント」に特化するタイプか、包括的に機能全体を強化するタイプで、「財政措置」機能へ介入するプロジェクトは稀でした。


図1:保健システム強化のためのフレームワーク(ログフレーム形)
出典:『保健システム強化に関するタスクフォース報告書』(2007年7月、IMCJ)
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南部4県母子保健統合サービス強化プロジェクトをこのフレームワークを用いて類型化すると、図2に示したように、「マネジメント」、「サービス提供」型で、「サービス利用」への介入も一部見られています。しかしながら、本プロジェクトでも「財政措置」に関する活動は行っていません。

図2:南部4県母子保健統合サービス強化プロジェクト


成  果
マネジメント 財政措置 資源創出 サービス提供 サービス利用
活動 



マネジメント
         
財政措置
         
資源創出
         
サービス提供
         
サービス利用           


最初に述べたように、本プロジェクトも最終年に入り、プロジェクト後の継続性、特に財政面から見た活動の継続性を危惧する意見がでるようになりました。『ビエンチャンタイムス』のくだりで触れたように、この国の行政に係る人は上から下までのほとんどの人が、開発支援ドナーがどうにかしてくれる、彼らが解決してくれると考えているようで、このことは我々のカウンターパートも同じように感じているのではないでしょうか。今回、アタプー県保健局のセクターワーキンググループ(Sector Working Group: SWG)会議にて、「費用共同負担(Cost Sharing)」を提案しました。もちろん、突然提案したわけではなく、専門家による事前の根回しはしてありました。時期的に非常に遅い時点での提案であり、どれ程の効果があるかはあまり期待できませんが、協力成果の継続性の意義、そのためにはカウンターパート側もそれ相応の負担をすべき、また、オーナーシップの重要性等をできるだけ伝え、今後の対応に活かしてほしいものです。

今まで、プロジェクト後の活動経費負担には多くの開発専門家が悩んできました。我々は、開発協力の継続性や持続性を声高に謳いながら、保健システム強化のフレームワークの類型化でも記述されていますが、「財政措置」面を「活動」として積極的に取り上げてはきませんでした。我々の開発協力に対する基本的考え方に問題があったような気がします。IMCJの保健システム報告書のなかで述べられているように、介入を始めるときに、保健システムフレームワーク全体を眺め、どの機能に介入し、どの機能に介入していないかを認識し、介入できない機能には、他のドナーの介入の可能性(援助協調)を探りながらプロジェクトを形成し、進めていく必要があります。ただ、援助協調といっても、多くのドナーは我が国以上に持続性、継続性に対する考え方が希薄である印象を持っています。なかには、「緊急援助」と「開発援助」の違いを認識しているのかどうか疑わしい協力も見受けられます。それらのドナーたちと、短期的にはともかく長期的視野に立って協調していくのは至難の業に思えます。

いずれにしましても、継続性のあるプロジェクトを行うには、「財政措置」の機能強化は重要であり、「資源創出」、「サービス提供」、「サービス利用」も安定した「財政措置」なしには機能しません。WHOのフォーラムでは示されていませんが、「(責任ある)マネジメント」を行うにも、「財政措置」は必須です。本プロジェクトの例で考えますと、SWGの開催やモニタリングやスーパービジョン活動等、マネジメント能力の強化・維持活動のために要する日当宿泊費や交通費等の経費が必要となります。プロジェクトでは、これらの経費をプロジェクト終了後にカウンターパートが負担できるかどうかが当面の課題になっています。

本プロジェクトでは、「財政措置」に関する活動を最終年度になりわずかならではありますが、取り入れてみました。本来は、プロジェクト開始時に継続性に関して双方が認識し、プロジェクト期間中はもちろんのこと、プロジェクト終了後の「財政措置」に関する計画、見通しを共有することは必須です。「ラオスは貧しいから仕方がない」で始めると、協力成果の継続は困難になるどころか、下手な介入をしたがために、カウンターパートたちや住民のオーナーシップや自立心が育つ妨げになりかねません。それでは開発協力をやっている意味がありません。


参考資料:『保健システム強化に関するタスクフォース報告書』(2007年7月、国立国際医療センター国際医療協力局 保健システム強化タスクフォース編)

(i) 現国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine:NCGM)http://www.ncgm.go.jp/
(ii) WHO原案による修正点(タスクフォース報告書18ページより引用)
・健康は 、サービス提供者である保健医療専門職や公的組織の関与と、その受け手である患者や住民といった当事者の参加との補完的共同作業によって維持あるいは増進すると考えられる。だが、WHOは包括的定義を定めたにもかかわらず、その概念的フレームワークは(恐らく評価やランキングをするための都合上) 「サービス提供」という提供者/供給者サイドの機能に限定した構図を描いた。タスクフォースでは、サービス提供者とサービスの受け手による相互補完的、協働的なシステムが望ましいとして、受益者サイドの機能としてサービス利用を第5の機能としてWHO の原案に追加することにした。
・患者や住民はサービスの受益者という立場だけではなく、開発の主体者でもあるというタスクフォースメンバーの一致した開発哲学のもとに、患者や住民らサービス利用者の主体的参加を促す目的もあって、「サービス利用」機能を独立して追加することにした。


(建野/㈱ティーエーネットワーキング)
2014.11.3