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The scene

パクセー便り#12
「ラオス国母子保健統合サービス強化プロジェクト」
へ派遣中の建野技術顧問からのお便り

 

パクセーはラオスで2番目に大きな街で、チャンパサック県の県庁所在地。
プロジェクトの事務所は同県保健局・母子保健課内に置かれています。

保健情報マネジメントシステム

Health Management Information System – HMIS

本年7月末に、セコン県タテン郡でコンピューター利用の初期トレーニングコースを開催しました。生徒は、ヘルスセンター(以下HC)の職員と郡保健局並びに郡病院スタッフの計18名で、表計算ソフト「エクセル」の使い方を主に二日間のコースでした。タテン郡保健局では、保健情報のレポーティングシステムをデジタル化し、データ入力を簡素化かつ正確化するために独自の予算で管下の6カ所のHCにノート型パソコンを配布しましたが、コンピューターをうまく使うことができないので、トレーニングしてほしいとの要請がありました。後述するようにHCスタッフはさまざまな活動を担っておりますが、地域レベルでの人口関・保健関連データ収集は、彼(女)等の重要な仕事となっています。彼(女)等がコンピューターを使えるようになることは、情報システム構築の第一歩と考え、パイロット的にセコン県タテン郡のスタッフのトレーニングを行うことにしました。

ラオ語でのキーボード操作は可能な者がほとんどでしたので、内容はエクセルでの表作成、簡単な関数等、実技を交えながらのトレーニングを行いました。郡当局としては、保健省が指示したフォームへの打ち込みができるようになることを第一目的としていましたが、エクセル等の基本操作を学ぶことで、フォームへの打ち込みも可能になると説明し、エクセルの基本操作学習トレーニングを行いました。この方が、受講者のコンピューターに対する関心も高まり、積極的に学ぶようになるのではないかと判断して実施した次第です。

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講義風景、右側で立って指導しているのはDHOの統計担当職員

ラオスの保健分野では、従来から統計の不備が指摘されてきました。戸籍制度が未だに確立されておらず、このことが保健医療の統計問題にも大きく影響を与えてきました。このような中で、WHOやアジア開発銀行等のドナーを中心にHMIS(Health Management Information System)の導入が計画され、整備が進められてきました。例えば、2004年にWHOの協力を得て作られた “Village-based Health Information System”では、村レベルで作成されるVillage form 1A(Family Information Sheet)とVillage form 1B(Census on Births, Deaths, Family Planning and Environment)の二つのフォームに記載することから始まります。村長もしくは村長補佐、もしくは村の保健ボランティア(Village Health Volunteer、以下VHV)ヘルスボランティアが毎年家庭訪問し、家族の人口動態を記入し(VilA)、記録は村長の自宅に保管されます。年末に記入者は再度家庭訪問し、記載事項の確認を行うとともにVilBフォームに出生・死亡・家族計画・トイレの有無・井戸の有無等の情報の記入を行い、これらの記載されたフォームは村長の自宅に保管されます。これらは主に個人毎の情報です。

HCのスタッフは、年度初めに、Vi1A及びVilBの記載のチェックを行い、空白欄の無いことを確認後、村長とVHWの立会いのもとにVilA、VilBからVi2a, Vi2c, Vi2dを作成します。Vi2cはVi1Bから出生・死亡だけを抽出したもので、残りはVi2dとなっています。次は、家族ごとの情報の作成です。ここで作成されたHMISフォームも村長の自宅に保管されます。HCスタッフは、Vi2a、2c、2dから村ごとにまとめてHMISフォームVi3a、Vi3c、Vi3dを作成し、郡並びに県の保健局は、HCから挙げられたフォームから郡並びに県レベルのHMISフォームを作成します。このような複雑な流れを毎年踏んで、保健省でのデータは作成されます(図1)。

図1:Village-based data collection and consolidation
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保健サービスや疾病像等に関しては、HCや郡病院、県病院が独自に活動実績を作成し、保健局の方に月毎に報告しています。報告様式は、同じフォームを用いており、HMIS-Form Reg1:外来患者用、Reg2:入院患者用、Reg3:妊産婦用、Reg4:5才未満時用、Reg5:お産用、Reg6:家族計画用と指定されたフォームに記入し、保健局の方へ提出することが決められています。

本システムでは、”Village-based data collection and consolidation”として、Villageレベルで情報が収集され、HCスタッフを通して、郡、県の保健局へ挙げられていくことを骨子としています。なかでも、HCスタッフが果たしている役割は大なるものがあります。村で作成された人口動態や環境等に関するデータをチェック修正し、これを基に家族ごとのデータを作成します。それに加えて、HCにおける診療記録(Reg1〜Reg6)も作成し、毎月保健局の方へ報告しなければなりません。因みに、郡病院並びに県病院の活動記録もHCと同じ診療記録(Regl〜Reg6)に記載し、郡並びに県保健局へ報告することになっています。

記の流れは、2004年末にラオス保健省とWHOが作成し、実施に取り組んできた“Review of the Health Management Information System”の概略ですが、システム自体がうまく機能せず、その結果、ラオスの保健情報の信頼性が低くなっています。本システムでは、データは村からあがってくる人口・保健関連情報(Village-based information)とHCや病院における診療記録の二つに大別することができます。大雑把にいうと、前者は、戸籍等の「市民課」系の、後者はいわゆる「保健」系のデータ、情報といえます。

試行されてからこの方10年たちましたが、このシステムはうまく機能しているとはいえませんし、モニタリングや評価を本格的にやったかどうかも定かでありません。では、このシステムが機能しない原因は、どこにあるのでしょうか。村やHCレベルにあるのでしょうか。それとも、郡並びに県保健局の流れのなかにあるのでしょうか。保健省は、後者に対し、IT化を進めており、いくつかの郡で、パイロット的にiCloudを利用するDHMIS(District Health Management Information System)の導入トレーニングを行っています。これが導入されれば、許可されたものは誰でもデータバンクにアクセスできるとのことです。

私は、今まで問題は前者にあると考えていました。村レベルの行政能力に問題があるとはよく聞かされていましたし、HCレベルでは、そのキャパシティを超えると思われる「依存」があり、業務を遂行するに難しいと考えていました。しかしながら、いくつかのHCにある管轄下の村の情報やこれらをまとめた郡の情報等(表1、表2)を知るにつけ、多くのHCレベルでは、保健省が進めている“Village-based Health Information System”は機能しているのではないかと考えるようになりました。郡レベルでは、管轄するHCからの情報はまとめられており、図1に示す郡や県レベルにおける“Data Consolidation”や“Data Reporting”に問題があることが考えられます。現在導入されつつある、DHIMSにはこの辺の状況を考慮して進められることを期待しています。

表1
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表2
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問題がどこにあるかは別にして、本システムでHCに求められている役割、特に公衆衛生的情報収集に関する役割は大きいものがあります。そもそも、HCに求められている業務は、日常の診療業務、健康診断業務、予防接種業務、アウトリーチ活動、住民に対する啓蒙活動、等々多彩を極めています。当然、これらの業務の報告書を定期的に作成し、郡保健局に提出することが義務付けられています。昔、カンボジアのプロジェクトでHCスタッフの業務量を調べたところ報告書作成に費やす時間割が非常に多く、日常業務を行うに支障を来していると聞いたことがあります。ラオスにおけるHCも同じような状況にあるのではないでしょうか。

HCスタッフがコンピューターを使えるようになり、インターネット環境を利用できるようになることは、情報システムの最前線の強化の第一歩になることは勿論のこと、HCにおける多彩な業務を整理し、簡素化することにもつながるものと考え、コンピューター教室をプロジェクトに加えてみました。

(建野/㈱ティーエーネットワーキング)
2014.12.9