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The scene

パクセー便り#13
「ラオス国母子保健統合サービス強化プロジェクト」
へ派遣中の建野技術顧問からのお便り

 

パクセーはラオスで2番目に大きな街で、チャンパサック県の県庁所在地。
プロジェクトの事務所は同県保健局・母子保健課内に置かれています。

費用共同負担その2

先日、「南部メコン川沿岸地域参加型灌漑農業振興プロジェクト」 (i) の調整員大槻和弘さんの訪問があった。大槻氏は、十数年前にラオスで展開した母子保健プロジェクト「キッズスマイル(Kidsmile)プロジェクト」 (ii) の調整員をしており、建野は同プロジェクトの国内委員を務めていた関係で一緒に仕事をした旧知の仲であります。

先日、ラオスのプロジェクトの調整員がビエンチャンに集まった調整員会議の折に、我々のプロジェクトの調整員である西嶋氏がプロジェクトで取り組もうとしている「費用共同負担(cost sharing)」の話を紹介しました。大槻氏はKidsmileプロジェクトの時にcost sharingの導入に中心となって取り組み、また、建野も保健省との交渉に関係したこともあり、その後の費用共同負担の進捗を確認し合うためにプロジェクトを訪ねてくれました。十数年ぶりの再会でした。

Kidsmileプロジェクトは、正式名は「子どものための保健サービス強化プロジェクト」ですが、通称名であるKidsmileで知られています。本プロジェクトの目的は、「子どものための保健サービスを強化する」ことですが、成果重視の前に「プロセス」を重視することを心がけたプロジェクトでした。すなわちプロジェクトが変化・成長する過程をカウンターパートと共に経験し、考え、対策を作っていくという協力です。現在あるものをうまく使いながら、自分たちで全てをやっていく、そこに到達するために何が必要であるかを、皆で考えていくというプロジェクトです。

保健省の各局とビエンチャン県並びにウドムサイ県の2県をパイロットにプロジェクトは展開しました。これだけでもユニークなプロジェクトでしたが、本プロジェクトでは、これに加えて費用共同負担を提案し、導入したことです。最初は、ラオス側はもとより日本側も最貧国であるラオスで経費負担ができるとは思うことができず、誰も相手にしませんでしたが、プロジェクトチームは、プロジェクトはラオスのプロジェクトであり、日本側は部分的に支援していること、プロジェクト後の継続性の問題、オーナーシップの問題等々を粘り強く説明しました。ラオス保健省は各部局を交えた協議を繰り返し行い、いつまでも援助に頼ることはよくないこと、本プロジェクトが目指す活動はラオスの子どもにとって重要であり、プロジェクト後も継続していかなければならないこと、そのためにはラオス側も経費負担をしなければならないこと等を確認し、プロジェクト活動の10%をラオス側が負担するという日本側提案を受け入れました。保健省官房との間に覚え書きを交わし、当時のJICA事務所長が保証人となる形で、費用共同負担がスタートしました。費用共同負担が導入されるにつれて、ラオス側の各部局が理解を示すようになり、積極的に係るようになり、ラオス側も自分たちの予算年度に合った形で活動を捉えていこうという姿勢が見られるようになりました(JICA-Netマルチメディア教材、「キャパシティディベロップメントへの取り組み〜ラオスKidsmileプロジェクト」より引用)。

pakse13-1.jpg大槻氏は、その後、フィジーやミャンマーのプロジェクトに従事し、費用共同負担の導入を試み、フィジーでは導入できましたが、ミャンマーではできなかったと話していました。同氏がミャンマーで作成したポンチ絵を紹介します。年毎に日本側の負担(水色)は減少し、カウンターパートの負担(ピンク)は増えています。このポンチ絵の特徴は、自分たちが負担することになると負担をできるだけ少なくしようというインセンティブ(?)が働き、無駄な出費を省いたり、効率的にしたり(工夫したり)することで、活動自体の経費も少なくなるというものです。この図では、黒ぬきの部分が経費の節約分に当たります。5年後にカウンターパート側が活動経費を全て負担できるようになる国は少ないと思います。ラオスのKidsmileの例は、年毎にカウンターパート側の負担分を増やすというものではありませんでしたが、一部でも負担することにより、カウンターパートのオーナーシップや自助性が育っていくのは間違いないものと思います。

パクセー便り11号(費用共同負担)の「保健システム強化のためのフレームワーク」の説明でも触れましたが、我が国の技術協力で「財政措置(Finance)」を取り上げた協力は非常に少なくなっていますが、保健システムのコンポーネントである「資源の創出」や「サービス提供」、「サービス利用」も安定した「財政措置」無しには機能することは難しいものがあります。費用共同負担を導入し、維持するためには、「財政措置」への関与や介入は避けて通れなくなるものと考えています。大槻氏のポンチ絵が示すように、費用共同負担は、「持続可能性」「オーナーシップ」「自助性」という開発協力の成否に密接に関係する三要素の創出に大きく寄与するものだと考えています。

Kidsmileプロジェクトに費用共同負担が導入されてから約10年、先日の調整員会議で本プロジェクトが費用共同負担の導入の試みを紹介した時に「話題」になったことから推察すると、Kidsmileの経験はラオスではあまり活かされていないようです。我々のプロジェクト、母子保健統合サービス強化プロジェクトはKidsmileプロジェクトの流れを汲むものですが、今回、我々が費用共同負担について話し出してから、ようやく費用共同負担が検討されるようになりました。Kidsmileの取り組みがなぜ定着しなかったのか、我々は考える必要があります。その上で、今後の協力の在り方を考えるべきです。

「ラオスは援助なしでは成り立たない」と、ラオス政府や国民はもちろんのこと開発パートナーの多くが考えているのではないでしょうか。本当にそうなのでしょうか。それで良いのでしょうか。ラオス政府は2020年までに最貧国からの脱却を目指しています。その時に少しでも自立できるように今から取り組まなければなりません。現行プロジェクトやこれからの協力に費用共同負担の導入は必須だと思います。

(i) 南部メコン川沿岸地域参加型灌漑農業振興プロジェクト
ラオスでは、中小規模の灌漑施設については、農民組織が運営維持管理を行っており、乾期に自給生産以外の商品作物を栽培することで得られた現金収入を、水利費に充てるよう努力している。しかし行政・農民ともに商品作物生産の経験が浅く、末端水路管理に必要な技術力が不十分で、維持管理費徴収の制度がまだ確立されていない。この協力では、サバナケット県において、農林局職員と農民組織を対象に、参加型の水管理と、コメを含む商業作物振興のための営農改善の一体的な取り組みを支援する。
上位目標:メコン川沿岸地域の他の灌漑地域において参加型水管理による灌漑農業開発が促進される。
プロジェクト目標:サバナケート県において、県、郡農林局職員及び農民組織の参加型水管理による灌漑農業開発の実施能力が向上する。


(ii) 子供のための保健サービス強化プロジェクト(Kidsmile Project) (2002-2007)
 ・ プロジェクト目的:中央と地方における小児保健サービスが関係当事者の積極的参加により改善される
 ・ 成果
    1.研修情報システムがモデル県と中央レベルにおいて確立される。
    2.ネットワークシステムがモデル県と中央レベルにおいて強化される。
    3.MRとIMCIがモデル県と中央で確立する。
    4、中央とモデル県においてIEC機能が向上する。
 ・ 本プロジェクトでとられた主なアプローチ
    1.ラオス側の主体性(ownership)の尊重
    2.既存システムの有効活用
    3.コストシェアリング
    4.緊密なコミュニケーション


(建野/㈱ティーエーネットワーキング)
2015.1.27